●まんがによるまちおこしシンポジウム報告●
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【パネルディスカッション】
「まんがによるまちおこし」
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牧野:会場の皆さんから質問を受けることにしたいと思います。さまざまな厳しい状況の中で、アンパンマンミュージアムは大変な成果を上げておられます。事務局長の田所菜穂子さん、なぜこれほどに皆さんが来てくださるか、率直な感想をいただけたらと思います。

田所:今度の夏で開館して7周年になりますが、入館者数は比較的安定していて年間20万人前後できています。一応、収支の均衡がとれている運営だと思っていただけたらいいかと思います。香北町立やなせたかし記念館に、アンパンマンミュージアムとか、いくつかの館があるといった形でやっております。町立の施設なんですが、人口規模が6,000人に満たない所ですし、交通の便もよくない所なんです。だからこそ、何としてでも行ってみようという気持ちを起こさせているのかなあというところが一つあります。アンパンマンはアニメでやってますし、全国的に人気度が高く、小さなお子さんが必ず一度通るまんがなんで、すそ野が広い。そんな非常に単純な理由で来てくださっていると思うんです。香北町の場合は元々が商店街のまちおこしから始まった施設づくりではなかったですけど、商店街の活性化とかそういう部分も確かにあればいいなという声が地元にはありました。ただ、アンパンマンの著作権を管理するところが非常に厳しくて、商品化を一切許さない、という基本姿勢だったんですね。最初3年間ぐらいはぎくしゃくした関係でした。

 やなせ先生自体もあまり商売が目立つような形になるんじゃなくて、自然の中にひっそりこういう建物があってその雰囲気を十分楽しんで帰ってもらってということの方が理想であるのではないかということでやってきてます。現在は、町民の方たちを巻き込んで建物がこの地にあって良かったなと、そういうところに発展しないかなと思っております。

牧野:かつて横山先生が、横山邸のあの非常に素晴らしい一等地を漫画集団の記念館として提供しようじゃないかというお話を出したところ、もう一つそれに応える声が上がらなかったのは、あの狭い鎌倉にこれ以上人を呼んだらどうするんだという住民の方の意見があったんですね。つまり、まちおこしっていうのはその町の事情によって全く違うんだっていうことがあります。アンパンマンの聖地として子どもたちの夢を壊さないようにしようという、やなせ先生のご配慮もあろうかなと感じました。

 このシンポジウムそのものを提案された「まんがによるまちおこし事業検討委員会」委員長の平岡さんに今までのお話をふまえて、ひとことお願いします。

平岡:境港さんにしても石巻さんにしても、非常に特色がある事業をされているという感があります。今まで色々な意見を交わしてきましたが、その中で、案としてはおもしろいが、いざ実行に移すとなると、まちをどこまで含めていいものか、人をどのように動かすか、資金的にはどのようにするのか、パンフ一枚作るのにも全部お金なんですよね。
 横山先生は「フクちゃん」はじめコマまんがで非常に有名なんですけれども、実はご存じのようにアニメーションの先駆的な方なんです。今、宮崎駿さんはじめ、たくさんのアニメ作家が出られ世界的となってるんですが、最もそういう先駆けになったのが横山隆一先生であるということをわりに一般の市民の方も知らないんですよね。コマまんが、アニメーション、両方ともいけるんですね。木下さんの話を聞いて、これは大きな武器になるんではないかと大変安心しました。それでわれわれわずかの委員だけの提案ではなく、必ず市民の中にはおもしろい発想をもった方がたくさんいると思いますので、それを常に汲み上げれる何かを作らなくちゃいけないんじゃないかなと感じております。

 板橋さんにお聞きしたいのですが、見に来る方がリピーターなのか、それとも観光客を相手にしているのか、ちょっとその点をお願いします。

板橋:3月までで大体50万人になりますが、その中で市内の人が15%です。仙台市は100万人強がおりますが、そちらの方が60%、周辺を含め県外からが大体25%ぐらい。今東北の方は道路網がよくなっていて、東京から石巻まで大体5時間で来られます。福島、山形、岩手が大体3時間圏内になっていて、個人客が大体95%ぐらいです。

 私が今悩んでるのが事業の採算性なんです。石ノ森萬画館は石巻市の施設で、運営委託を第3セクターの私どもの会社が受けています。それで、収入だけでは採算はあいませんので、足りない分は委託料として利用料金方式でいただいています。萬画館の運営事業の収支は0です。収益は一切上がりません。今年の収入ですが、2,500万円が運営委託費ということで、それで入館料をまかないます。予測を下回った場合、足りない分は補正で出ますけど、余った場合には市の方に返します。昨年の委託費は2,300万円ですが、1,200万円を市に返しております。今年は2,200万円でとんとんかなというところです。うちの館の施設が電気代、光熱費が月200万円かかりますんで、電気代、光熱費、人件費一切、維持管理費を大体間に合わせているというのがあります。

 グッズ部門と飲食部門は自分たちの直営でやってます。当初から、館ではこういったものを作りますということで、版権・著作権を普通の金額じゃなくてかなり安くしていただきました。資本金6,000万の内、5,000万でオリジナルグッズを作りまして、館にはここでしか買えないという品物しか置かないというコンセプトでやっています。12坪しかありませんが、夏場繁忙期ですと、大体一日200万ぐらい売り上げます。今ですと、土・日で来る方が一日700〜800人、売り上げは30万か40万円ぐらいになってます。まちづくりとの関連で言いますと、うちの会社では、「集客」という言葉を使っておりません。「集人」という言葉を使って、人を町に集めます、と。それをお客にするのは、それぞれ商店、商店街の自助努力であるというふうにしております。石巻を元気にして人を集めて、石巻を全国に知っていただきたいということを目的としてます。

まんがによるまちおこしシンポジウム
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