●まんがによるまちおこしシンポジウム報告●
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【パネルディスカッション】
「まんがによるまちおこし」
(8)

牧野:そろそろ時間になってきました。いわゆるまとめということになるんですが、石ノ森さんは「漫画」の「漫」をさんずいにしないで「萬(よろず)」としていたのも、彼がもしも元気であればもっともっといろんな面をまんがに生かしていた。つまり木下さんがおっしゃっていたように、まんがってのは媒体だから、まんがが独立してあるのではなくて、青写真であったり、脚本であるということなんですね。

 そういう意味の一つの具体例として、映像を映してみたいと思います。まんがをどんなふうに描かせるかというとです。

まんがによるまちおこしシンポジウム

いま「車」という文字があります。で実は、3コマ目までは学術的なまんがではありませんで、文字の行間にあるんですが、4コマ目にこの車の成り立ち、車って文字はこういう形でできてるんだよっていうことを説明しようとしてるものです。

まんがによるまちおこしシンポジウム

次は犯罪の「犯」という字ですが、「犯」の一方は獣、犬であります。それに対するコマがこうあります。次は「病」、釜の上に寝ているようにあついんだというのを、3コマ目まではまんがではありません。で一挙に4コマ目で飛躍することによって、子どもたちは「病」という文字の成り立ちと因果関係を知って、その文字を覚えるという効果があるのではないか。そこに更におもしろい表現をするために、アナログアニメカードというものがあります。これは「切」という文字のところに「切」という形が5段階くらいで見られるようになってます。ちらちらすると「切」という文字からまんがに移行するわけです。こういったものが1枚150円くらいという機械があるわけなんです。

 それから四字熟語を出してください。

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この砂上の楼閣という四字熟語があるんですが、これ今、3コマまんがに学生がしたものですが、あそこにオアシスがあるぞと行ってみたら、それは工場であった。水がなかったというようなことと魚で大物を釣ってみたら、それは自分たちが海へ流したゴミであったという因果応報のような故事ですね。

 こういったものを使って随分長く京都で活動しております。この前は中国の芸術家協会、これは全てまんが以外の分野も入っている団体なんですが、その方々と一緒になって、同じように使っている四字熟語を中心として、よく皆さんご存じの天安門の近くにある労働人民文化宮、国宝級の建物の中で四字熟語まんが展というのをいたしました。そういうように、おもしろくて興味深くて勉強にもなるという世界がこれから開発できるんではないかっていうのが、私の京都精華大学のマンガ文化研究所におけるテーマでもあるわけです。

 卒業制作展の中で、ある一人の女子学生がこういうのをやったわけなんです。なぜこの漢字とまんがっていうのを考えたかといいますと、毎年暮れになると今年を表す一字というのを新聞などでやっているんですね。震災があった時は「震」という字でしたし、今年は「帰」という字でした。

 その活動をしておりますのが、京都にあります財団法人日本漢字能力検定協会でして、10年間ぐらいの間に10万人から今200万人の受講者があります。ご存じのように、漢字というのは誰のものでもありません。中国から輸入して、著作権すら発生しません。どんな文字を、新しい文字を作っても著作権いただけないんですね。それくらい漢字というのは皆さんのものである。その漢字能力検定協会の大久保理事長さんはそれに着目して検定方法を開発したために、今、京都の五条の真ん中にビルを購入して財団法人を運営されているんです。

 私はよせばいいのに、漢検ができるんだったらまんが検定もできるんじゃないかと理事長に言ったんですけど、「牧野さん、コンピュータに判断できないものは100万人単位ではものにならないんだ」と言われました。つまり、私がまんがに魅せられてまんがの道に入り、横山先生、石ノ森さんというような同輩・大先輩、そういう素晴らしい仲間を持ったんですが、まんがでなければできないキャラクターみたいなものをもっと研究して、それがいかに経済効果を持ち、しかも息長くというふうに考えた時に、教育面に使わざるを得ない。教育というのはどんな時代になっても、教育は教育としてあるわけですね。その中にまんがを持ち込むということは意義の高いことだと思うのです。その中で人生勉強としての横山先生の生き方、生き様みたいなものをこれからいくらでも語ることができるんです。

 水木さんそのものが大変にすばらしいキャラクターで、石ノ森さんも非常に魅力的なキャラクターでありました。そういったことを総合して欲張って「さいたまユーモアセンター」は全部取り込んでやろうとしている。そういう欲張り同士が、我こそ我こそと立ち上げるものを、またまんがでつなごうという欲張りのマンガ文化研究所でありまして、そういうふうにお互いが張り合いながら良いところをアピールしていく。フランスやベルギーやイタリアにも自慢していきたいと。そういうふうにすれば、日本のまんが文化というのは枯渇しないでこれからも更に伸びていくのではないかなと考えております。

 最後はかなり勝手な、いつものような牧野に戻ってしまいましたけど、これを最後のまとめにかえまして終わりたいと思います。皆さんありがとうございました。

まんがによるまちおこしシンポジウム
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