横山隆一記念まんが館では、開館以来常設展で展示されていた資料・作品を、永く保存して
将来に渡るまんがの歴史資料として活用するために、状態の悪いものを保存していくための
修復作業を始めました。
作業を担当するのは、高知県在住の紙資料保存修復士の一宮佳代子さんです。
まず修復する資料は、横山隆一が20代前半に物語「宝島」のための挿絵として制作
した切り絵が掲載された雑誌です。[1934(昭和9)年2月発行・「新青年」春季増刊号]
現存する数少ない資料として大変貴重なものです。
経年劣化により変色し、ぼろぼろになった紙の印刷物を今後数十年の保存に耐えるようにする
作業の経過をご紹介します。
[修復過程]
まずは資料のクリーニング作業。
スポンジでふき取ると、茶色のほこり汚れがとれる。
紙の傷みを計る指標・酸性度チェック。この資料はph2.5と酸化が進み、非常に状態が悪い。
印刷インクが落ちないかテストをした後、水洗いすることに。紙を徐々に湿らせていく。
純水(水酸化カルシウムも少し加えた)に浸けることで汚れを抜き出し、中和していく。
茶色い濁りは落ちた汚れ。浸けた水が透明のままになるまで、水を交換しながら繰り返す。
酸性度がph7~8くらいになることを目安とする。
後は、濾(ろ)紙と不織布に挟んで自然乾燥させて、クリーニング終了。
極薄くした糊をつけて、敗れた部分に当て紙をしていく。
当て紙は土佐和紙・楮(こうぞ)紙。茶色くなった本紙に合わせて、当て紙も薄茶色のものを使用。
裏一面に薄い紙を貼る。
表にも部分的に補強の紙を貼る。(どちらも高知特産の典具貼紙(てんぐじょうし)を使用)
裏貼りの紙の不要部分を切り取って整形する。
糊を貼って反り返った資料を、重石を載せて数日間プレスして伸ばす。
以上で修復完了!