第19回まんがの日記念・4コマまんが大賞は2023年4月から9月5日(火)までの期間で応募を受け付け、本年は45都道府県と台湾から合わせて1190人、1,548点の応募があり、高知出身まんが家の矢野徳さんと、くさか里樹さんが審査した結果、一般部門6点、ジュニア部門(小学生以下)5点、計11点と学校賞2校(南国市立大篠小学校・高知市立義務教育学校土佐山学舎)が決まりました。
※ジュニア部門の高知市長賞は該当無し。
※今回規定に違反したり、他人の作品に極めて類似していた作品を選考から外しました。また、入選決定後、入選を取り消す作品が出てしまいました。応募規定を必ず確認してください。
受賞作品と一次予選通過作品等は、12月9日から開催の「第19回まんがの日記念・4コマまんが大賞作品展」にて展示を行います。また、9日14時より受賞者表彰式を行います。
第19回一次通過者及び作品一覧
【一般部門】
フクちゃん大賞「ちょっとひと休み」
北原佳代子
トンボが様々な危機から逃れ、人間の指にとまって、ひと休み!山、川、空と続き、スマホをタッチする指にとまる。三コマ目にはクモの「ネット」がインターネットの危機を暗示して、四コマ目で、「スマホもちょっとひと休み!」というメッセージになっている。トンボは羽をたれてホッコリ!深読みすればトンボは古語では日本の事でもある。作者がどれだけ意識して描いたのか判らないが、見事な作品になった。四コマ目の色彩のピンクが効果的ですね! タイトルも絶妙!(矢野)
次々とトンボを襲う危機からほっと一安心へ、ダイナミックな物語を詩的に描いた絵本のようですが、スマホ依存の子供はトンボ取りには興味ないから安全、という悲しい皮肉でもあるようなないような…。深い魅力のある作品です。(くさか)
高知市長賞「無題」
丸山健
この美しく造型された画面をジーっと見続けていると、突然ある事に気付かされ、何やら切なく人生がいとおしくなる。そう! 人生は一度だけ! なにやら禅問答の様な作品でユニークですね。色彩もとても美しくホンワカ! 二コマ目のハンコの長さが少し長く感じられるのも面白い! ハンコは男性らしい。(矢野)
ここまでも物静かな4コマまんがも珍しい。シーン…ブフフ! みたいな笑いの後に、モヤっと疑問が湧いてきます。使い切り判子? 転写? それともインクが滲み出てくるニュータイプ? とにかく、おもしろいです。(くさか)
やなせ兎賞「今度はここの砂か・・・」
P.N. 920
自然なコマの運びで、甲子園球児の失恋が描かれていて、切ないですね。一コマ目の「ごめんなさい」と声が聴こえそうな女性のしぐさ、つれなく去って行く後ろ姿ガックシの姿も見事!遠くの楽し気な人たちが、悲しさと孤独感を増すスパイスになっていてグー!(矢野)
甲子園出場経験のある元高校球児でしょうか。敗戦の砂を持ち帰り、前へ進む節目にする、痛々しくも、応援せずにいられない可愛らしい作品。家にどのくらい砂が溜まってるかちょっと気になります。(くさか)
よさこい賞「救世手」
岡林晃史
大雨から救ってくれる「手」は神の手なのか?いやよく見ると、何やらエイリアンの様でもあるし、巨大ロボットかも?と思ったりする。線状降水帯の被害をストップ!四コマのコマ自体を使ったアイデアがユニークですね!四コマ目の人物の表情もグー!しかし、この手が離れると超巨大洪水になりそう。つい海に流している液体を連想したりする。あやうい作品でもあります。(矢野)
理屈はいらない4コマまんがならではの世界。ふと思いついたシャレでも磨き上げればこんな素晴らしい作品になるというお手本ですね。(くさか)
よさこい賞「めまいの原因」
喜久山悟
ジェットコースターの描写と人物の表情も見事!四コマ目の三半規管の中を走るゴーという音もすごく、思わず自分の耳の中の出来事だと想像して本当にめまいがしそうであった。ムーブマンもすばらしい。耳の内部の解説図も何やらおかしいですね。タイトルにレクチャーするドクターもいてユニーク!(矢野)
ちっちゃい部分を壮大な妄想力で迫力満点の劇場に仕立てましたね。確かに三半規管の形はこの乗り物のコースに見えますね。どなたかに是非オムニバス映画にしてほしい。(くさか)
よさこい賞「正体」
P.N. タイケヒデミ
白目がちの少年が、正体不明の生き物を見た驚きを表現していてグー!名詞ではない言葉を具体化して、実に奇妙なキモカワ生物として見せてくれていて、なぜこれが「まんざら」で「やぶさか」なのか、そして「そのどちらでもない生物」をよく見ると、タイヤらしい物が付いていて、走りそう!それらがユーモラスなので気付きにくいが、「フェイク」や「バーチャル」の正体かもね。けっこうコワイ作品ですね。(矢野)
まわりくどい系の言い回しからここまで不条理な世界を生み出せる思考の飛躍力に脱帽です。わけ知り顔の幼児キャラにも味があります。凄まじくおもしろいです。(くさか)
【ジュニア部門】
フクちゃん大賞「熟す」
村上辰之介
ももたろうの絵本を読んでいる「ぱか」とページを開く音もしている。三コマ目で「ぱか」と桃が割れて、ナゾの黒いものが出現!何だろう?と思ったら、何とハチマキをして、ヒゲまで生えたオジサンがフテブテしく横たわる姿で登場「え、もう出番?」ズコッちゃうよね!テーブルにはビールやダンゴまであるのだ。笑える作品で見事フクちゃん大賞!めでたし、めでたしです。(矢野)
このタイミングでおやつが桃だったら妄想せずにはいられませんね。桃の熟し具合を見抜く目といい、完熟桃太郎を酔っぱらいに例えるところといい、普段よくものを見ている証拠ですね!
(くさか)
やなせ兎賞「ギトギトネーム」
岡田柚葉
一コマ目の人物が何やらヒョーキンなのがいいですね。先生なのか生徒なのか判らないのも気になるし、ニキビや汗も見えて、ツブラなヒトミもミョ~に笑えるキャラですね!めっちゃ可愛い女のコもグー!四コマ目で「です」と言う、表現もすばらしい。キラキラネームの次はギトギトネームの時代かもね?!コマ運びが自然でリズミカルなのも見事です。ちなみに作者はめっちゃさわやかネーム!(矢野)
「キラキラネーム」はみんな知ってるけど「ギトギトネーム」は新鮮!「からあげ」という名前もストレートでおもしろい!先生やその他大勢の描きかたも上手です。(くさか)
よさこい賞「けいたい落ちちゃった!」
岡村侑芽
心あたたまる、うれしくなる作品ですね。一コマ目の女の子の表情がとても上手!カメさんがケータイ操作を知っているのがすごいし、なんだかほほえましいですね。四コマ目の女のコの嬉しそうな顔もすばらしい!赤い色が映えています!二コマ目と三コマ目のひかえめな「波」も効果的。絵本にしてみたくなる作品ですね!(矢野)
昔話や童話っぽい雰囲気と今どきの携帯電話のギャップがおもしろいですね。カメがGoogle検索できるなんて、すごい発想です!
(くさか)
よさこい賞「人間食い」
金辺冬花
絵が上手です!文字も!仔犬もかわいい。二コマ目で「ぼうを二本持ち・・・」と表現したのが面白いですね!人間の顔を口元だけで表現したのもいいセンスです。四コマ目で母さん犬が登場!「人間食い」をげひんと教えるのが笑えます。人間は「犬食いは下品だ」と教えているけれど。犬の価値観が正しいのかも知れないよね。ワン!ダフルです。(矢野)
「犬食い」したら怒られますよね。そこからすごい逆転の発想をしましたね!普段の暮らしの中にも逆転させて考えたらおもしろいことがいっぱいありそうです!(くさか)
よさこい賞「ヒーロー」
堀江明人
クマなのかタヌキなのか?謎のキャラクターがなんだか家庭的な部屋で魔法のマントを取り出し、着がえて、いざ出動!四コマ目で「すくいたいもの」が判って、笑えちゃうというカンチガイオチの見本のような作品ですね!しかしマントは何の役にたつのかなァ?マントですくうべきかもね?!部屋の様子や祭りのにぎわいも良く描けていてすばらしい!意思の強そうなキャラもなんだかヒーローぽいですね!(矢野)
主人公のクマとマントが目立つように描かれてていて上手な絵です。4コマ目はほんとにびっくり、すごく楽しいオチです!マントは気分を上げるためだけ!?そこがまたいいですね〜!
(くさか)
【総評】
今回も面白い作品が多く、様々な才能がひしめいているのが感じられて、頼もしく嬉しくなりました。まァそれだけ、選考が難しくなりますが、しっかり一点一点の作品と向き合い、その多様なテーマやモティーフや切り口を楽しみながら・・・。そして作品が絞られる度に、甲乙つけがたく迫って来る、作品というよりも作者のエネルギーや感性に押しつぶされそうになって、インターバル! 息をととのえての選考になりました。複雑で多様な発想に時代の風潮が反映されているのを実感させられ、四コマまんが恐るべし! とあらためて思いました。入賞作品の多様さをも是非楽しんでほしいと願っています。次回もまたどんな作品が集まるのか、とても楽しみです!(矢野 徳)
応募作品が入ったずっしりと重い箱から、創作の熱が立ち昇って見えました。工夫を凝らした素晴らしい作品ばかりでした。ネタの重複が少なく、着眼点の広がりを感じました。不安定な社会情勢ですが、縮こまらず、自分らしいアイディアを捻り出すことを楽しんでいるように感じられ、まんがの可能性を改めて感じました。(くさか里樹)