受賞者決定!! 第18回まんがの日記念・4コマまんが大賞 

2022まんが大賞オモテ

第18回まんがの日記念・4コマまんが大賞は2022年4月から9月6日(火)までの期間で応募を受け付け、本年は42都道府県から合わせて846人、1,072点の応募があり、高知出身まんが家の矢野徳さんと、くさか里樹さんが審査した結果、一般部門6点、ジュニア部門(小学生以下)6点、計12点と学校賞2校(南国市立大篠小学校・高知市立朝倉第二小学校)が決まりました。

受賞作品と一次予選通過作品等は、12月17日から開催の「第18回まんがの日記念・4コマまんが大賞作品展」(会場:高知市立自由民権記念館)にて展示をする予定です。


【一般部門】

フクちゃん大賞「あおりの果て」
加藤桂

見事な表現力で「ののしり合い」から「ゆずり合い」に変化したおかしさを伝えてくれる4コマのお手本的な作品ですね。三途の川の彼岸に輝く太陽があるのもなんだか笑えます。タイムリーなテーマなのも高得点!(矢野)

二度とあおり運転はするまい、と思う怖い怖い作品でありながら、ちゃんとユーモラス。これぞまんがの力と魅力。果てまで行く前にゆずり運転したいものです。交通安全ポスターにしてほしいです。(くさか)

高知市長賞「ほどこし」
P.N. ひもと・はじめ

4コマに時の流れをも表現した心あたたまるドラマを見せてくれる達人の作品ですね。停泊していた船が4コマ目では遠ざかって行く!猫の動きの的確さも、画面構成の美しさも見事!アニメにしてみたくなりますね。どの位の時間が過ぎていったのか、想像してみるのも楽しめる作品ですね!(矢野)

猫のあくびで、長〜い時間経過がわかりますね。野良猫なのか連れの猫なのかわかりませんが、大好物であるはずの魚をほどこすとは。軽くプライドが傷つきつつも特大の優しさが心に沁みる、複雑な味わいの作品です。おじいちゃんの釣りの腕前と猫の狩りのテクニックが対照的。くっきりした色と最後に遠く去っていく船が印象的です。(くさか)

やなせ兎賞「夜の蝶になりました!」
村上武志

絵の表現力抜群ですね!変身してゆく蝶の描写がすばらしい!幻想的な色彩の美しさにしびれます。 起承転結がしっかりしていて、4コマ目の夜の蝶が、美しくなったのに、あまり嬉しそうではないのが、切ないですね。こんな4コマがあるのを想像した人がいるのだろうか?!やったね!!(矢野)

素敵な魔法を見たようです。堂々と羽を広げたアゲハ蝶の鱗粉が酷暑でどんどん溶け落ちて辛さマックス、と思った瞬間の大逆転劇。視覚的にもとても美しい作品です。(くさか)

よさこい賞「死神」
二階堂正宏

異様なシチュエーションから始まり、的外れなノーテンキなドクターの診断が笑わせる、手練れの作品ですね! 背中にとり付いた死神が表情を変える4コマ目では、ブッ飛んでいるのが効果的です。患者が、頭と背中の症状を告げているのに、全然見ようともしない医者は死神をとりのぞいてくれたから名医かもね!(矢野)

ブラックでナンセンス。背中の死神がずっこけてるのがおもしろい。しかし、待てよ?もしかして、助かる命も助からなくなるお医者さんの凄まじい誤診こそがほんとの死神なのかも。頭に出刃包丁が刺さってる患者さんのインパクトを一言で超えるこのお医者さんがまさに主人公でしょう。(くさか)

よさこい賞「 釣りガチャ」
P.N. オノエ源

ユニークな画風が、不思議なムードを漂わせて、水遁(すいとん)の術の忍者や浦島太郎の乗るカメを釣り上げたり、狸の活躍や岸辺の草や波立つ水面などが、何やら、当然の様にありうる姿の様相に感じさせるユニークな作品ですね! とらわれた忍者の姿も何やらおかしいですね。(矢野)

ガチャガチャと呼ばれるカプセルトイが大人気ですが、ガチャの絵を描いているわけでもなく、時代劇の釣り風景で、何が出るかわからないガチャガチャのワクワク感を描くなんて凄技としか言いようがない。連れの狸が飛び上がってるのが可愛いです。(くさか)

よさこい賞「近くのボタン」
梶浦政治

造形的な画面が美しいですね! 奇妙なオンボロバスも二人のキャラクターも、魅力的なのも良いですね。 ちゃんとバスが止まるのが笑えます。 上と下のバス、2コマ目と3コマ目が同じ造形なのも、みょうにおかしな気分になります。独特な境地が感じられてグー!!(矢野)

ダジャレなんですけど、おばあちゃんがほんとに勘違いしたのか、なんとな〜くやってしまったのか、よくわからないゆるさが魅力的。「次とまります」のアナウンスも何故なのかは明かされていません。絵柄も彩色も作品によくマッチしていて独特の味わいがある作品です。(くさか)

 


【ジュニア部門】

フクちゃん大賞「ロボットのおりょうり」
小野むつみ

ロボットが色々な場面で活躍しはじめています。女の子が「ごはんつくって♪」と楽し気に話してるのが「♪」で伝わって来ます。3コマ目のクシャミが原因という事もしっかり描かれています。4コマ目のロボットの表情もいいですね!女の子の体も描いたらよかったね。(矢野)

ロボットがくしゃみするだけでもおもしろいのにネジが飛ぶなんて楽しすぎます。くしゃみしそうになってるロボットの表情がお見事。普段からよく観察できている証拠です。最初はロボットを冷たい機械のように描いたことで後半のかわいらしさが際立っています。(くさか)

高知市長賞「節約と節制」
倉石檜

お父さんのプックリおなかを高級モッツァレラチーズに見立てて、調味料など次々にかけているのが、おかしいですね! 描かれていないけれど、次にプックリおなかにカブリついている姿が想像されて笑えるのが、すばらしい!パパのTシャツがGOHANなのもグー!タイトルのかたくきまじめな語感も効果的!面白い!!(矢野)

この子は何をしてるのか、「ぷよぷよで弾力のある白いもの」とはなんなのか、想像を掻き立てられるコマ運びが見事です。おしゃれな食材とパパのお腹というギャップが楽しい。この子は想像力豊かな一流シェフになるでしょう。(くさか)

やなせ兎賞「春夏秋冬」
近森美羽

絵がすばらしいですね!それぞれの季節を「さくら」「花火」「やき芋」「クリスマス」でとても詩情あふれる美しい造形で表現していて感心しました。 バルール(色彩の効果)がすばらしくこの感性は美羽さんの宝物ですね! やなせ兎賞にピッタシの作品だと思いました。空気感が見事に季節を表しています!(矢野)

鮮やかで大胆。春の水色の大地や夏の紫の夜空、赤い秋など大胆で真似できない色使いで、隙間なく塗られていて、作品から力強さを感じます。いろんな角度から見た絵になっているのもすごい。(くさか)

よさこい賞「ぶどうの生き方」
杉藤美優

色彩の美しさがすばらしいし、空間感覚が生かされた画面が造形的なのがチャーミングですね! ぶどうのキャラ化もかわいくて、おしゃべりも面白いですね。一粒一粒ぶどうの性格があるのが楽しい。タイトルの「ぶどうの生き方」というのも何やらおかしいですね!(矢野)

すごいタイトルです。タイトルの通り深い意味を感じました。同じことでも楽しんでるぶどうと悲しんでるぶどうがいて、楽しんでるぶどうは落っこちても跳ねて遊べる。とても大事なことを教えられました。ありがとう!(くさか)

よさこい賞「宝箱の中身」
中野友暉

大ぼうけんなのが、その苦労の末に得たものとのギャップのためにちゃんと描かれていてグー!ですね。手にはしっかり宝のありかの地図を持っていたのが4コマ目ではなぜか消えている。ビックリ箱のビヨヨーン君が「ザンネン」と言うのもショックですね。「ガーン」が人物の表情にピッタシです。(矢野)

え〜!?とがっかりするオチなのに、前半が生き生きとしているからあまりがっかりせずに笑えました。波がすごく上手に描けています。きちんと参考資料を調べたのがわかります。いい作品にしたい気持ちが伝わるし、上達のためにとても大事なことです。(くさか)

よさこい賞「カエルと合唱」
鈴木希和

絵が上手ですね!カエルや人物がしっかり表現されていて、観察力のすばらしさ!特に人物の表情の描写が見事で、才能が感じられます。3コマ目のヒゲオヤジのキャラも何やらピッタシで、4コマ目で合唱するシーンは、歌声が聴こえて来そうですね。(矢野)

そのまま絵本になりそうな、とてもすてきな作品です。田んぼや小川を近くに感じてホッとします。カエルの合唱が聞こえるとつい真似をしたくなりませんか?きっとみんなこれと同じことをやってると思いますよ。(くさか)


【総評】

今回も面白い作品が多く、選考にずいぶん時間がかかってしまった。
面白い作品をふるいにかけるのは本当につらく、謝ってばかりであった。
4コマまんがも多様化が進み、様々な切り口や展開が押し寄せて来るのだから、多様な価値観を理解し評価できる、しっかりとした座標軸を整備しなければ、とても選考なぞ出来ないのだとつくづく思わされた。
誠実に努力したが、力及ばなかった事もあったと思う。
面白い作品が多過ぎて、入選百作品、入賞五十作品くらいは有ったというのが実感だった。そこから各六作品を選ぶのだから、つい狸ねいりを決めこみたくなったりもしたが、反面、それだけ面白い作品が多いのは、嬉しく、頼もしくもあり、その事に力を得て、何とかクリアする事ができたのであった。4コマの未来は明るいゼヨ!! 若い才能も育っているのです。(矢野 徳)

鋭いもの、ゆるくて楽しいもの、そう来たか!とびっくりするものまで、バラエティーが豊かでした。そして、読み手を傷つけない配慮が自然に身についている作品がほとんどでした。生馬の目をぬく経済成長時代から支え合う共生時代へと、社会の変化が作品にも現れている気がします。まんがは自分を、社会を、時代を移す鏡として大切な存在だなあと、改めて感じました。(くさか里樹)